スキーボードのメンテナンス
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スキーボードのメンテナンス
どんな道具であっても正しくメンテナンスをして大事に使えば驚くほど長持ちします。手間暇かけて愛情を込めてメンテナンスをすると、道具がそれに応えてくれるのかもしれません。だから昔の人は大事に使い込んだ道具には魂が宿る九十九神(つくもがみ)と言う考え方をしていたのでしょう。
実際に九十九神が宿るかどうかはさておき、メンテナンスをすればしっかりと応えてくれるのはスキーボード、ファンスキーであっても同じです。
何と言っても滑走中には自分の命を預けていると言っても過言ではありませんからね。メンテナンスをしてもしすぎると言うことは絶対にありません。
ところで、そもそもメンテナンスとはどう言った意味でしょうか?wikipediaで検索してみました。
人々が生活のうえで使用しているものは、どんなものでも時間とともに劣化・老朽化し、やがて使用に耐えなくなる運命にある。しかし、メンテナンスによって、欠陥を早期に発見したり寿命を伸ばしたりすることが可能である。大量消費の時代である現在、大量生産から再利用・再使用にむけた動きが活発であるが、それにとどまらず、現存する製品や構造物などの効率化や延命を実現するメンテナンスという技術は欠かすことはできない。(wikipediaより引用)
これをスキーボードに当てはめると、劣化防止や破損などの早期発見と言ったところでしょうか?
日頃から自分が愛用している板に気をかけてやることにより、お使いのスキーボードの寿命を延ばし長く使用することが出来るようになったり、破損などを早期に発見して安全に滑走することが出来るようになると言うことになるかと思います。
メンテナンスの種類
さて、それではスキーボードにおけるメンテナンスとはどんな種類があるのでしょうか?下記に挙げてみます。
- 板の保護を目的としたメンテナンス
- 滑走性能向上のためのメンテナンス
- 修理、修復を目的としたメンテナンス
これらのメンテナンスの目的ごとに作業の施工内容や施工するタイミングなどは全て異なります。またメンテナンスにはある程度の専門知識や道具などが必要となってきますので、メンテナンスを行う対象(この場合はスキーボード)に対してある程度の知識などがないと容易に手を出すことは難しいと思います。
スキーボードは初心者でも簡単に滑れるようになります。
しかしメンテナンスと言う技術はそう言うわけにはいきません。
メンテナンスの方法を理解していなかったり、そもそもメンテナンスの施工道具がなければどうしようも出来ないのです。
それでも自分の使っている板を自分でメンテナンスしたいと言う姿勢はとても良いことです。スキボダGJはそう言った姿勢を全力で応援したいと考えています。
そこでこれらのメンテナンスのうち、比較的簡単に行える板の保護を目的としたメンテナンスについて、必要な作業をスキボダGJ流にアレンジ、簡易化した『なるべく簡単で安価に行えるメンテナンス方法』をご案内していきたいと思います。
メンテナンスの目的や施工方法、施工に必要な道具など、皆さん自身でメンテナンスを始めやすいように道具や施工方法を簡易化した内容を紹介していきたいと思います。
なお、これから説明する内容は本格的なメンテナンスを行っている方から見ると邪道な方法に見えるものもいくつかあるかと思います。しかしどのような形であれ、まずは自分で始めると言うことが大事であるとスキボダGJは考えております。
内容は全て私自身で実際に行っている方法ですので致命的な問題はないかと思いますが、その点ご了承をお願いします。
板の保護を目的としたメンテナンス
スキーボード、ファンスキーの保護のためのメンテナンスは主に滑走後に行います。このメンテナンスの目的はスキーボードの劣化防止、つまりスキーボードの寿命を延ばすためのものです。
作業の概要は非常に簡単です。一言で言ってしまうと
スキーボードを綺麗な状態に保つ
これだけです。
綺麗な状態を保つと言うことは『濡れていたら拭き取る』『汚れていたら綺麗にする』『綺麗な状態を維持する』と言うことです。
部屋の掃除などと同じで、日頃から習慣付けておけば大した労力もなく出来るメンテナンスかと思います。
内容を簡潔にまとめると以下の3点になります。
- 水分を除去する
- 滑走面の汚れを落とす
- 板に優しく保管する
それでは具体的にはどうすればいいかを見ていきましょう。
水分を除去する
この作業の目的はスキーボードのエッジの錆防止です。
スキーボード、ファンスキーだけでなく、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツで使用するギヤにとって水分は大敵です。
雪の上で使うものなのに水分が大敵、と言うのは一見矛盾しているように思えるかもしれませんね。
正確に表現すると、スキーボードに残った水分により、エッジに錆が発生することが問題なのです。
滑走が終わった後のスキーボードは、大抵の場合雪が付着しています。
付着した雪をそのままにして収納袋にしまったり、或いはそのまま車に積み込むと、当然ながら付着した雪は溶けて水分になります。その水分がエッジを浸食して錆の元となります。この錆がスキーボードの大敵なのです。
錆びの初期はエッジの表面に現れるので、この段階で錆びに気づくことが出来れば直ぐに落とすことは出来ます。
しかし錆が出たまま長期間放置すると錆びはエッジ内部まで侵食していき、エッジ破損などの原因となります。
また直ぐに落ちるとは言え、一度錆が出たエッジはしっかり落としてやらないと再び錆が付着しやすくなってしまいます。
そのため、基本的には錆がつかないようにしっかりとメンテナンス、つまり水分除去をしてあげることが大事なのです。
水分除去の施工方法
水分による錆の侵食は皆さんの想像以上に早いです。実際に計測したことはないですが、雪などを落とさずにそのまま収納袋や車に置いたままにした場合、温度や湿度などの環境にも左右されると思いますが1~2日程度でエッジに錆が出てくることもあります。
そのため水分除去は滑走後、なるべく早く行うことが有効となります。
水分除去の施工方法は以下のとおりです。
ブラシをかける
ビンディングの隙間や板にこびり付いた雪の塊をブラシでしっかりとこそぎ落とします。特にビンディングの隙間に張り付いた雪は氷となっている場合が多いですので、ブラシの柄などを利用して上手いことを落としてください。
ブラシでスキーボードが傷つくことはありませんが、ブラシの柄を利用するときには特に滑走面に傷をつけないように気をつけて作業してください。
ブラシ自体は100円均一ショップのもので十分です。
拭きあげる
ブラッシングで大きな雪などを除去したら、板やビンディングの表面に残る水分などをタオル等でしっかり拭きあげてください。
特に滑走面やエッジは念入りに拭き、水分が残っていないかどうかをちゃんと確認するようにしてあげてください。
タオルは自宅などで使い古したタオルで十分です。
解放式ビンディングの注意
解放式ビンディングは構造上なかなか雪が落としにくいです。しかしビンディング内に残った雪も溶ければ当然ながら水分になります。
歯ブラシなどの小さなブラシでしっかりと雪をかきだしてやるのも一つの手ですが、いっそのこと敢えて細かいとこの雪はそのままにして、日光が当たる場所などに立てかけて雪が溶けるのを待つと言う手もあります。
要はエッジに錆が付かないように水分を除去してあげれば良いわけですから、ある程度板を放置して、雪が溶けて水分になった後にしっかりと水分除去してあげれば良いと思います。
但し解放式ビンディング内に残る雪は意外と多いです。収納袋に収納している人は良いですが、剥きだしのまま車の中に置いておく方はタオルなどでビンディング周囲を養生しておかないと、気が付いたらビンディング周辺が水浸しに、、、と言うことにもなりかねませんのでご注意ください。
水分除去の『簡易化』
ブラッシングや拭きあげについて『しっかりと』と表現しましたが、実は滑走面(特にエッジ)以外、つまりデッキ面はうっすらと拭きムラ程度の水分が残るくらいまで水分を落とせばそれで十分です。
但し解放式ビンディングの場合は水分が残ることが多いので、『しっかりと』落としてくださいね。
滑走面の汚れを落とす
この作業の目的は板のソール(板の裏側、滑走面)の保護と劣化防止です。
滑走後のソールは意外と汚れているものです。春スキーなどでは黄砂や花粉などで目で見て分かるくらい汚れが付着しますが、それ以外の時期でもリフトからの油汚れなどで目に見えない細かい汚れがついてしまい、これがソールの劣化や滑走性が落ちる原因となります。
しかし黄砂や花粉などと言った目に見える汚れは何となく分かるかと思いますが、目に見えない細かい汚れが、、、と言ってもなかなかピンとは来ないかと思います。
目に見えないけどもスキーボードの滑走性を落とす原因となる汚れ、その原因は滑走時に発生する静電気にあります。
スキーボードで雪面を滑走すると板の滑走面と雪の間で摩擦が発生します。この摩擦により静電気が発生して細かい汚れなどを吸着してしまうと言うことなのです。
またソールの劣化や滑走性を落とす要因としてケバ立ちと言う現象があります。
この現象は主にソールのトップやテールのエッジ付近に白い筋のようなものが浮き出てきます。ケバ立ちが出ている板は見ればすぐに分かるかと思います。
ソールの汚れやケバ立ちの発生については厳密に言うともっと細かい理由や要因があるのですが、かなり専門的な話になってしまいますのでここでは割愛させていただきます。詳しい話はGR Skilifeさまの『滑走面のちょっと深い話』で詳しく解説されているので興味がある方はご一読ください。
ともあれ、ソールの汚れやケバ立ちは滑走時の雪面に対する抵抗になるのは間違いなく、これをそのまま放置しておくと滑走性は確実に低下するだけでなく、滑走面の劣化にも繋がります。例えるなら表面がツルツルとしたものとザラザラしたもの、どちらが抵抗が少なく滑りやすいと思いますか?と言うことなのです。
滑走後に汚れた板を元の綺麗な状態に戻す。これがこのメンテナンスの目的なのです。
蛇足ですが、ちょっと詳しい方であれば『滑走面のメンテナンスならワックスじゃないの?』と思われるかもしれません。
もちろんそうなのですが、ワックス作業はメンテナンスと言うよりもチューニングの分野になります。
ここでは『なるべく安価で簡単に出来るメンテナンス方法』のご紹介ですので、チューニングについてはまた別の機会にご紹介させてもらいます。
但し滑走後の板の状態によってはメンテナンスと共にチューニングが必要となる場合もありますので、機会があればチューニングについても触れてみたいと思います。
滑走面の汚れの落とし方
滑走面の汚れ落としは前述の水分除去が完了している前提となりますが、ソールの汚れがソールの劣化を招くとは言っても、1分1秒を争うほど急激な劣化を起こすわけではありません。時間と道具さえあれば滑走後の屋外で行って頂いてもいいですが、自宅に帰ってからの作業でも問題ありません。
滑走面の汚れの落とす作業方法は以下のとおりです。
ブラッシング
ブラシでソールをしっかりと擦り、ソールに付着した汚れを落とします。多少のケバ立ちであればこのブラッシング作業で落とすことが可能です。通常であればボアブラシを利用した作業となりますが、汚れ具合によってはブロンズブラシを使用します。
ブラシ類でしっかりとブラッシングをした後にはフィニッシュクロスで仕上げのブラッシングを行います。
スクレーバー
春シーズンなどに滑走した場合、花粉や松ヤニなどでソールに土汚れみたいなものが付着することがあります。そう言う場合にはスクレーバーを使用して汚れをこそぎ落としてやる必要があります。
恐らくねちゃねちゃした粘度の高い汚れなので落とすのに苦労するかもしれませんが、頑張って落としてください。
汚れをしっかり落とした後はブラッシングを行ってください。
リムーバー
シーズン始めや春シーズンなどに滑走した場合、或いは室内スキー場を滑走した場合には、ソールが見た目で分かるほど汚れることがあります。そう言った場合にはリムーバースプレーで汚れをしっかりと落としてあげる必要があります。リムーバースプレーを吹いたら汚れが浮き出てくるので、タオルなどでしっかりと汚れを落としてあげます。
一度のスプレーで汚れが落ちきらない時には何度かスプレーを繰り返してみてください。
汚れをしっかり落とした後はブラッシングを行ってください。
汚れ落としの『簡易化』
ブラッシングについてはいきなりフィニッシュクロスでもさほど問題はありません。擦ってあげるとフィニッシュクロスの表面にカスのようなものが付着すると思いますので、これがあまり出なくなるまで擦ってあげてください。但しフィニッシュクロスはヤスリに近い性質です。必要以上に擦るとソールを痛める原因となる可能性がありますのでご注意ください。
スクレーバーを必要とする程に汚れている場合にはいっそのこと屋外などで水洗いをしてあげても良いかと思います。台所用などの中性洗剤とブラシを利用してごしごしと汚れを落としてあげてください。
このときのブラシは雪落とし用などのブラシを使用してください。間違っても金タワシなどは使用しないようにしてくださいね。洗い終わったらしっかりと洗剤を落として水分除去を行い、乾燥後には改めて滑走面をブラッシングしてください。
リムーバーの正式名称はワックスリムーバーです。リムーバー滑走に必要なワックスまで落としてしまうので、リムーバーを施工したら、再ワックスが必要となります。そこでリムーバーを必要とするような汚れにはメラニンスポンジが有効です。使いやすい大きさにカットして、しっかりと擦ると少しずつ汚れが落ちていきます。リムーバーほどの即効的な汚れ落としはできませんが、その後の再ワックスの手間を考えるとこちらの方が簡単で効率的だと思います。
因みに、、、もしホットワックスセットをお持ちでしたらクリーニングワックスを掛けてしまうのが一番楽です。スクレーバーを必要とする汚れ以外には一番有効だと思います。
必要な道具の代用品
ここまででご紹介したブラシやスクレーバーはスキーのメンテナンス専用道具です。専用品なので非常に使いやすいのですが、購入するとなると一つ2~3,000円程度します。しかし今後スキーボードのメンテナンスを継続して行う予定がある方はちゃんとした専用品を購入するのが一番です。
道具類はこだわり出せばキリがありませんが、最初の方はこのようなものを購入すればよいかと思います。
GALLIUM ガリウム Trial Waxing BOX[トライアルワクシングボックス][JB0004]アイロン付 ホットワックスセット
これにはアイロン、スクレーバー、ブラシ類、ワックスなどの必要な道具の他、ワックスやメンテナンスの施工方法が掲載されたマニュアルもあるので非常に便利かと思います。
しかしお薦めのものを紹介しておきながら矛盾してしまうのですが、こう言ったものを購入するのは今回のテーマである『なるべく安価で簡単なメンテナンス方法』からは外れてしまいます。
実はこれらの道具には比較的安価で購入できるもので代用できるものがいくつかあるんです。それらの内容を正規の道具と比較しながら下記にご紹介します。
但し代用品はあくまでも代用品です。専用道具の方が性能も使い勝手も上です。代用品はあくまで導入としてのお試しとして使用するにとどめておき、本格的にメンテナンスを始めようと言うことであれば上で紹介したような専用品の購入をお勧めします。
専用部品 | 代用品 | 注意点等 |
ワックスアイロン | 家庭用アイロン | スチーム機能のないもの/今度洋服などには使用できなくなります |
ワクシングペーパー | キッチンペーパー | 強度が専用品より弱い/ワックスを吸いすぎるので注意 |
ナイロンブラシ | お風呂掃除用ブラシ | 毛足の長さを2~3センチ程度にカット |
ブロンズブラシ | 真鍮ブラシ | 小さめのものしかないかも |
ボアブラシ | 靴磨き用ブラシ | 毛足の長さを2~3センチ程度にカット |
スクレーバー | アクリル板 | 100均の定規等でも可 |
フィニッシュクロス | スコッチブライト | 洗剤のついていないもの |
なお、代用品を使用して何らかのトラブルが発生しても自己責任でお願いします。
板に優しい保管方法
このメンテナンス(?)の目的は保管環境による板の劣化の防止です。
スキーボードの保管はあまりさほど気を使わなくてもいいですが、それでも気をつけていただきたいポイントがいくつかありますので紹介します。
保管場所
スキーボードは水分だけでなく紫外線にも弱いです。保管時にはベランダや軒下、玄関前など屋外は避けて室内に保管するようにしてください。
温度、湿度
スキーボードは高温多湿の場所を嫌います。車内やルーフラックなどに保管するのは避けてください。
推奨する保管場所
シーズン中には何度も使用することになるので、あまり奥の方にしまいこんでも大変だと思います。皆さんの住居環境にもよると思いますが、取り出しやすくあまり邪魔にならない玄関の片隅や部屋の端っこなどあたりが良いのではないかと思います。
スキーボードのメンテナンス まとめ
スキーボードは小さく短いため、メンテナンスは普通のスキーやスノーボードよりも比較的容易に行えます。
滑走だけでなくメンテナンスについても初心者に優しいのがスキーボードです。言葉にして解説すると複雑そうに感じるかと思いますが、実際にやってみると意外と簡単に実行できるものです。
また板をメンテナンスしてあげると言うことは日頃から自分の板をじっくりと観察することにも繋がりますので、破損などのトラブルの早期発見にも繋がります。
自分で手間を掛けてあげればあげるほどスキーボードへの愛着も増していきますので、是非とも滑走後のメンテナンスを実行してみてくださいね。